WORKER HOLiC
 今日はやけに差し戻しが多いな。

 何か失敗してる……とかじゃなくて変更が多いのよね。

 色の指定とか、レイアウトの変更とか。

 何だろう?

 不思議に思いつつも仕事に取り掛かり、キリがいいところでお昼に入ると、すっかりランチタイムは終わっていた。

 うちの会社も、ある意味でフレックスよね。

 社員食堂はすっかりお茶の時間メニューだし、お昼にバタークリームの様なケーキも食べたくなかったし、近所のコンビニでサンドイッチを買った。

 どうせ食べるならコンビニのシュークリームの方が美味しい。

 目の前にある公園のベンチでそれを広げていると、何故かボケ倒しのOLさんと女子高生の会話が聞こえてきたり……

 ……芸人かな。

 タコ焼きを片手にやり取りしてるけど。

 不思議な光景だわ。

「今から昼か?」

 聞こえてきた低い声に思わずむせた。

「んぐ……っ!!」

「え。おい? 大丈夫か?」

 慌てて脇に置いてあったペットボトルをくれたのは有野さんで、コーヒーを飲みながら涙目で彼を睨んだ。

「ゴホッ……だ、大丈夫です」

 有野さんは片眉を上げると、どこか皮肉げな笑みを浮かべて隣に座る。

「たまたま会った部下と上司だ。これなら問題ないだろ」

 飄々と言ってのけ、ベンチの背もたれに寄り掛かった。

 ……何なの、この人は。

 モグモグとサンドイッチを食べつつ、こっそりと反対側を向く。

「そんな露骨に無視するのは、普通じゃないだろう」

 どうすればいいと言うのよ。

「せめて普通にしようよ。普通に」

「私、そんなに有野さんと普通に会話してた記憶もないんですが」

 そもそも隣に座られた記憶は、こないだの飲み会くらいだ。

「……そうかもしれないな。でも、前はそんなに睨まなかっただろ」

「眼鏡が家用なんで、度数が微妙なんですよ」

 ……確かに、睨む回数は増えていると思いますけれど、そういう事にしておいて下さい。

「視力……悪いんだ? でも眼鏡じゃなかったよね?」

 無くしたんです。

 言うとあの夜の事を蒸し返す事になるので、無言でシュークリームを開けた。
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