WORKER HOLiC
 なんなの?

 ねぇ。

 普通ね? 部下のいる前でそんな話が出て来るもの?

「ハッハッハ~。君はいつもそれだね?」

「今回は正真正銘の話ですよ」

「Dフーズの社長から、誰かいないかと話が来ているんだが」

「俺なんかより、甥御さんに持って行ってはいかがですか?」

「あれは駄目だよ。鼻で笑って終わる」

「あぁ。そうかも知れませんね」

 し、心臓に痛い会話なんですけど~!!

「とにかく社長。俺の部下がびっくりしているみたいです」

 有野さんの声にちらっと振り返ると、社長も有野さんも笑いながら私を見ていた。

「じゃあ、このお嬢さんにも一つ、何かいい話がないか聞いてみるかね?」

 ぇえ!?

 冗談じゃないわよ!

「それは駄目ですよ。俺の部下を勝手に寿退社させないで下さい」

「ほう? 成る程な」

 何が成る程~!!

 そして何故、そんなに和やかなの~!

 狸と狸の化かし合い!?

 私は踏み入れてはいけない空間にいる?

 誰か助けて~!!

 ……と、思っている最中にエレベーターが一階に着き、有野さんが私の手を引いて降りる。

 ……窒息するかと思った。

「加倉井さん。無事?」

「ぶ、無事ですとも」

 私の返事に有野さんは指先でキーホルダーを掴み、部署の鍵を振り回す。

「甥御さんの関係で社長とは仲がいいんだ。冗談だから真に受けないように」

 あ、あれ……冗談なの?

「よくも悪くも、アットホームな会社で困るよね」

「し、知りませんよ、そんなの」

 そう言うと有野さんは眉を上げてみせた。

「加倉井さんて、うちの会社の情報源じゃなかった?」

「私は個人には関わらないんです」

「ふぅん? 全体的に満遍なくって感じなわけだ」

「個人情報源なら、営業のオネーサマに聞いてください」

「嫌だよ。あの人に聞いたらこっちが聞いた話も筒抜けになるじゃないか」

 その通りですね。
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