WORKER HOLiC

:Ⅱ

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 月曜日。

 可憐なグラビアアイドルを眺め、腕を組む。

 もちろんグラビアアイドルを見てニヤニヤするはずもなく、淡々とパソコンの中のその画面を眺める。

 爽快レモンジュース。

 ……の、キャンペーンポスター作り。

 最近ちょっとだけ太り気味になった……ようには見えないけれど、そうらしい、このアイドルのウエストと太腿を修正。

 所属事務所の横槍。

 やはりグラビアのアイドル……商品には口うるさいのがこの業界。

 最近の画像処理技術はホクロも違和感なく綺麗に無くすことも出来るし、ないものも綺麗に付け加える事が出来る。

 例えばこの胸の様に。

「朝から熱心だね。加倉井さん」

 低い声に顔を上げ、ついでに下がった眼鏡を指で上げる。

 ……時間が出来たら、コンタクトを新調しよう。

 眼鏡はたまにしかつけないので、とても鼻のあたりが違和感に見舞われる。

 有野さんの笑顔を見上げ軽く頭を下げた。

「おはようございます」

「うん。おはよう」

 そう言うと、有野さんはいつもの通りにグラフィック課の皆と雑談してから自分の席に戻った。

 今日の有野さんのスタイルは、夏らしい薄い素材のパーカーにジーンズ。

 ボサボサの頭は、ある意味ではトレードマーク。

 あまり細かい事は気にならない様だけど、それが返って無造作なオシャレに見えたりする。

 会社なのになんだ? と思う人もたまにはいるが、クリエイターは外部の人と会う事も稀なので、打ち合わせをする時以外はラフな格好の人が多い。

 私はいつもスーツだけど。

「加倉井さん、加倉井さん」

 何故かコッソリ呼ばれて振り返る。

 同僚の澤井さんが、ニヤニヤと私をつっつく。

「金曜日、あれからどうしたの?」

「……なんのことでしょう?」

 金曜日……と言えば、アレ。

 部内で飲み会に行った日の事だ。

「カラオケボックスで、有野さんの腕に絡み付いてたじゃない」

「……………」

 絡み付いた記憶はない。

 ないけれど……

「私、酔ってましたから、あまり覚えてないんです」

 ありのままを返すと、澤井さんはあきらかに肩を竦めた。
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