ストーカー
ストーカーの結末
 マムシの入って行った裏路地に私が入ると、マムシは声を張り上げて泣き叫んでいた。
 やはり、大事な知り合いだったのだろう。さっきも平然と人を殺していたマムシが、赤の他人のために泣くとは思わない。
 私は思わず、声をかけてしまう。

「大丈夫、ですか?」
 すると、マムシは切々と語った。
「あのね、僕の教子がね、死んじゃったんだ。僕の教子だったんだよ。なのに、死んじゃった。もうしゃべれない、抱きしめられない、痛い、痛いよ、胸がとっても痛いんだ!」

 私は思わずマムシの肩に手を置いた。
 すると、マムシは私に抱き着いてきた。

「え?」
 抱き着かれたことに関しては、特に疑問を感じなかった。しかし、抱き着かれた瞬間、異常なことが起こった。
 視界がぐらりとぶれる。
 まるで母体の中に戻ったような心地良さ。
 駆け巡る快感。

 マムシが離れると同時にそれは終わった。
 
 マムシは、笑顔だった。
 さっきの涙は嘘であったかのように、笑っていた。

 さっきのは何だったのだろう?もう一度、もう一度味わいたい気分になる。           

「なに、したの?わたし、に。」
「僕はただ抱き着いただけ。でも、よかったよ。これでようやく君が手に入る。」

 私はマムシの言っていることがよくわからなかった。
 しかし、ひっかかる単語があった。

 ようやく?

 それって、私のことを前から知っていたということ?

「教子は死んじゃったけど、君を手に入れれたからいいや。ねえ、忍?」
「しのぶ、って。なんで、わたしの、なま、え。」

「だって、僕君のこと、ずっとストーカーしてもん。
 でも、君もしていたから、『相思相愛』ってやつなのかな?」

 マムシは笑った。ひまわりのような笑顔で。
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