Focus

「どうぞ、座って」

椅子を引いて沙那さんにすすめる。


「そんな、いいのに」

まだ遠慮しようとするので、手を引いて座らせる。

「俺には何も遠慮しないでください」


沙那さんが俺を選んでくれなくても、それは仕方ないから。

口には出さなかったけれど、沙那さんは困ったような顔をした。

「沙那さんには、優しいのねー」


ミオがわざと聞こえるように嫌味を言う。

「俺は女性には優しいつもりだけど」

< 107 / 229 >

この作品をシェア

pagetop