Focus
たゆたう

沖縄から帰って来た週末に、もうひとつのバイト先である大使館跡に向かう。

甘ったるい名前のそれを口にするより、仕事場として向かうには大使館跡というのが自分にはしっくりときていた。



まだ早い時間だったが、打ち合わせには何人かが席について当日のプランを確認していた。

自分も沖縄の魚を撮ったファイルと、お土産のちんすこうを手に席につく。

「これ皆さんで召し上がってください」


言葉と共に箱を差し出すと、柔らかな笑顔をした品川さんが箱を受け取ってお礼を言ってくれる。

「ご馳走さま。沖縄で写真集の撮影だったなんて素敵よね。天気も良かったでしょう」

「幸いにも雨には降られませんでしたね」

風景撮影ではないから、最悪女の子の水着が撮れるなら、天気なんてどうでも良かった。ただその場合、ほんのわずかな布しか身に着けてないモデルにしたら寒くて大変だっただろう。

ビキニからこぼれそうな程成長していた玲奈ちゃんの胸を思い出して、慌てて打ち消した。

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