Focus
「フアッション撮影のアシスタントだから、そっち方面ばかりかと思ってたけど違うのね」
すっと写真の表面を撫でたミオの繊細な動きに、真剣にケーキに向き合う指先を思い出して息を飲む。
白い指先と鮮やかな魚、それを際立たせるマホガニーの木目が、くっきりと鮮やかなコントラストで目に焼き付く。
こんな日常でも時折、はっとするような光景に目を奪われる。それは自分がカメラを構えて一瞬を待ち構えているからなのかはわからない。
ファインダーを通して切り取られる、その一瞬を決めるのは今まで培ってきた自分の感性でしかない。
それが揺らされることがあるのは、そこに篭る思いや感情なんだ。