溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】


動きを読むのは簡単だ。相手の武器は、振り下ろすか、思い切り正面から突くか。

目を見開くと、相手の肘の関節が、数ミリ上に上がる。

腕を上げ切る前に、武器を落としてやる。

そのつもりで松葉杖を、今度は竹刀のように構えた瞬間。


──スパン!


聞き覚えのない音がして、思わずそちらを振り向く。

すると、新城さんが右肩を押さえていた。

かろうじて警棒は持ったままだけど、押さえた箇所が血に染まっていく。

敵の手にはピストルが。どうやら、サイレンサーをつけているみたい。

新城さん……!

そちらに気を取られていると、ヒュッと空を切る音がして、ハッと振り返る。

振り下ろされると思いこんでいたアイスピックの鋭い切っ先が、胸の正面にあった。

ほとんど反射的に松葉杖を振り上げると、切っ先は私のシャツを引っかけながら、宙に跳ねあげられた。

相手は手首を押さえて後退する。

一方私も、注意がそれてしまったせいで、怪我をしている方の足に思い切り力を入れてしまった。


< 123 / 279 >

この作品をシェア

pagetop