溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
そんなとき、特殊班に新人がやってきた。
女性にしては高い身長の、ショートヘアがよく似あう美人だった。
ひかりだ。直感がそう叫ぶ。
名前を変えているし、俺が名乗っても眉ひとつ動かさない。
けれど、手をつないだ瞬間、彼女の過去の記憶が勝手に流れ込んできた。
幼いころの自分。懐かしい、彼女の両親。
そして、あの血の惨劇。
疑う余地はなかった。彼女は、あの日行方不明になった本庄ひかりだった。
けれど、どうして記憶を失っているのだろう。
あの事件のショックで、脳が記憶の一部に蓋をしてしまったのかもしれない。
そう考えるのが自然なのだろうけど、正直俺はがっかりせざるをえなかった。
もしや、忘れたふりをしているだけなのでは。
彼女も、国分に近づく機会を求め、名を変え、SPになったのでは。
けれど彼女の記憶をいくら見ても、そんな事実は出てこなかった。
彼女は自分でもよくわからないうちに一ノ瀬の養女になり、あの事件以前の記憶を忘れていた。