溺愛モラトリアム 【SPシリーズ新城編】
「……抵抗しなかったな」
またすぐに触れられる距離で、新城さんが囁く。
羞恥のあまり、涙が浮かんで視界がぼやけた。
抵抗できなかった理由なんて、私にも説明ができないの。
お願いだから、もう離して。
私が、私でなくなってしまうから──。
「待たせたね、シンデレラ!」
バンと扉を開ける音と同時、マヌケな声が廊下に響く。
ハッとそちらを向くと、もう一つのフィッティングルームから出てきた国分議員が笑顔でこちらを見ていた。
かと思えば、みるみる顔が硬直していく。
「な、な、な……離れろっ、この薄汚い野良犬め!」
野良犬って……もしかして、新城さんのこと?
なにその昔の昼ドラみたいな台詞……。
「わあ!新城さん、何やってんすか!っていうか二人って、つきあってたの?」
後ろから出てきた大西さんが大きな目を丸くして言う。
その声で、やっと状況を理解した。
「いやあああぁぁー!」
見られた!新城さんに壁ドンされているところを、見られたー!
咄嗟に新城さんのみぞおちにパンチを食らわせてその場から逃げようとするも、相手は先輩SP。
「はいはい、落ち着け落ち着け」
パンチをかわされ、その腕をとられると、もう片方の手でどうどうと肩をなでられた。
ハッ、いけないいけない!SPたるもの、マルタイの前ではどんなことがあっても冷静でいなければ。