青蒼の夜半に、闇色の鳥を

・3・

 鋭い制止が聴こえなかったわけではない。

 追い詰められた声は、磨き抜かれた刃のようにシェイスの耳朶を貫いた。

 ただ、それに従うつもりは毛頭ないだけ。

 聖堂に転がり降りたシェイスの細腰、長く垂れた帯が翻る。

 それが身に沿う暇もなく、ラザーの剣がシェイスの首を刈りに来た。

「シェイス! 兄上! 止めろ!」

 ウルジャスの叫びが耳に焦げ付く。

 背中から抜いた剣の腹で、ようよう繰り出された刃を受け止めた。

 鈍く、手首に痺れが伝わる。
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