青蒼の夜半に、闇色の鳥を

・3・

 ひとりで開けるには重過ぎる扉を引いて、ぴったりと隙間を封じる。

 空の器を片手に抱えたラザーは、決して早くもなく遅くもない機械めいた一定の速度で回廊を行く。

 几帳面に結われた金色の髪が身動ぎのたびにさらりと揺れる。

 それすらも、まるで計算されているかのように乱れない。

 口許に始終浮かぶ穏やかな笑みも、逆に彼を底知らぬ存在に見せていた。

 王宮の侍女たちには人気のある、完璧な紳士ぶり。

 穏やかで、波立たぬ青年。

 怒りも苦しみも――情も想像不可能な、できすぎた存在。
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