~君は死んで、僕は読書~
病院の白いベッドの上、のんきにうたう彼女の体は、とても細い。

「ぽ、ぽ、ぽてち♪」

彼女のうた声も、細い。

その命も、細い。

僕にできるのは、そんな、なにもかも細い彼女の横で、本を読んでいることだけ。

「ぽ、ぽ、ぽてち♪」

「……」

「ぽ、ぽ、ぽてち♪ ぽてちはおいち♪」

彼女の行いを、見守っているだけ。





そして、

それなのに、

すごく暑い夏の日。

君は、この世からいなくなった。

まるで、次第に薄れゆく蜃気楼のように。

最初からそこにいなかったように。
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