【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
うーっと唸りながらブレザーの裾からびろんと出たカーディガンの裾でゴシゴシと顔を拭く成は、可愛らしくも愛おしい存在に見えて来る。


「勝手だけど、違うんだけど、笑里が、俺の代わりに燭に怒ってくれたみたいに思えて、嬉しいのに、燭が全然自分大切にしてないのは悲しくて、もう分かんねぇよー……」


人の為に泣くことが出来る成。だけど人の為に怒る事が出来ない成。怒れないから、それ以外の感情で真っ向にぶつかっている。


そんな成を見て、今度は里佳子が立ち上がった。


「お前ら勝手過ぎ!くそ!勝手に泣く奴に、勝手に怒る奴、あと……勝手に、アタシの気持ちも考えねぇで引く奴も、ウザイ!」


あまりにも里佳子らしい言葉。それは他の人なら頭に来る言葉だけれど、この場にいる人達には里佳子の色んな想いが詰まった言葉だという事がちゃんと分かる。


「良いか、アタシは誰にも守られるなんて望んでねぇ!アタシと燭は対等だろうが!ナメんなよ!あと、アタシは燭を一度たりとも家族だとか自分の一部なんて思っちゃいねぇよ!お前は昔から男として好きなの!クソッタレ!気付けよ!」


言うつもりの無かった想い。直球しか知らない里佳子のたがの外れた想いは、真っ直ぐ、真っ直ぐ投げられる。
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