【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
緩やかな振動を齎していたルイの手が、今度は素早く躊躇いなく抹茶色の毛布を剥ぎ取った。


「なっ……!んですか、コレは」


今度は私自身から震えた声が漏れる。抹茶色の頼りなく柔らかい鎧を剥がれた成は、あまりにも悲しい色に染まっていた。


横たわった身体は上下のスエットに阻まれて全容を確認出来ないが、露になった顔に残る無数の傷跡や痣、そして、息をしているものの意識を失い苦しそうな成の姿。


「……あの時、耳の事でおかしいと思った時に問い詰めていれば」


奥歯を噛み締めて唸るように低音を吐き出した燭の声に、私の掌にも力が篭もり、気付けば力一杯に拳を握っていた。


「ねぇ……ボクは願う。彼を救いたいと。その為にボクがどうしようとしているのか分かるよね」


ルイの怒りが、ルイの願いが、震えた声から伝わる。その震えがビリビリと心を麻痺させて、興奮の色を与える。


「やれ、ルイ。この後のことなんざいくらでも皆で考えりゃ良い。今、お前にしかアタシらの考えてる事が出来る奴はいない」


怒りと悔しさに涙を流す里佳子がタブレットに叫んだ。それを最後に画面上の映像は途切れ、夜の闇の静寂に私達は呑まれる。
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