【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「まぁまぁ。ルイも笑里も入ってみなさいよ」


居候なのにすっかり部屋に馴染みきっている成にため息を落としつつもコタツに入ると、そこには楽園が広がっていた。


「悔しいですがこれは狡いです。力が抜けますね」


「ホントに。人が程よく温まるようにちゃんと設定されている。毛布もふかふかだ。とても画期的な機械のようだね」


寒いという概念の無いルイのヒューマノイドロボット的な解説に、成は幸せそうにふにゃふにゃと頬を緩ませると、猫のようにルイに擦り寄った。


「でも、コタツはほら、こうやって人と入るのが幸せなんだよ。ミカンを食べるっつうのもおつなもんで」


「おつ……しゃれが利いている、粋、趣があるという事。つまり、コタツミカンは日本の美しい文化なんだね?」


言葉の意味を噛み締めて尋ねるルイに、成は否定もせず「そーそー」なんて生返事をしているものだから、ルイに変な事を教えないで欲しいと思いつつも訂正はしない。


何となく、今はこの緩やかな幸福に、小さな幸福に身を置いても良い気がするから。


これまで急速に過ぎていた日々が、途端にスローテンポを刻む。これが、幸福であり何でもない日常なのだろう。
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