【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「まぁ大丈夫だよ、大丈夫。だってあんなにバリバリやってんだぞ?」


そう言われ体育館の方を見下ろすと、丁度相手のアタックをルイと燭がブロックしてシャットアウトしているところだった。


「うわぁ、あれ、相手見るからにバレー部だよな。アイツらコエー」


身長の高い燭を上手く使い、スペック上プロのバレーボール選手になったルイがバレーボール部をまるで赤ちゃんを相手するように、遊んでいるように見える。


あんなにバリバリに動いているルイにも、どうしてか気持ちが落ち着かない。


最近のルイは、この先の事を不安にするような事を良く言う。私の記憶が、そして感情が近い将来全部戻った後どうなるか分からないような事を口にする。


それに加えて里佳子のさっきの発言を聞いたらどうにも止まらない。


「……お前がそんなでどうするよ。お前は自分の事を考えろ。じゃなきゃ、ルイが悲しいだろうが」


不機嫌そうに私を小突いた里佳子の言葉は表情とは裏腹に優しくて、心がチクリと痛む。


私の不安要素なんてただの要素だけであれば良いのに。この未来を確かに『生きたい』と言ったルイの言葉を信じ切れればどれだけ楽な事だろう。
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