【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜

決断エクスペイション




その日は、降水確率20パーセントにもかかわらず、雨だった。


進路を遠い北海道の高校に決めた中学三年生の私は、降りしきる雨の中、億劫な雨を無駄に祓いながらアスファルトを蹴っていた。


幼いながら、苦しみから逃げる手段を考え、考え、興味の無い酪農の高校を受ける事にした。寮のある、それでいて奨学金が貰える学校へ、大切な、唯一無二の小さなロボットを連れて。


勉強が苦手だった訳では無い私は、何度も教師に猛反対されたがようやく説得し、苦しみ抜いた今までより短い先にある明るい未来を展望していた。


そんな、雨の中でも幸福に満ちた私を、今の私は第三者として見ている。


幼い私は、まるでもうすぐ兄が迎えに来るから耐えられると言っていた成のように危うい。未来しか見えていない。


今よりも随分と細く、折れそうな私は誰がどう見ても危険な状態だと言うのに。


現実、大人は救ってはくれない。誰だって今の自分の幸福を捨てて他人を救済する事なんて出来ないのだから。


そう思うと、美樹は良く出来た大人だ。上手く上手く手回しし、少しずつ他人を動かし、そうして自分が手を出さずしてあの小さな社会の他人を管理しているのだから。
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