【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
「さて、ここでいっか」
「先生、ここ、屋上なんですが。しかも立ち入り禁止の」
私達が美樹に連れ出されたのは、生徒が普段入る事を許されていない屋上だった。
「まぁ教師の特権ですわ。ここでタバコ吸ってほぅってなるんが俺の癒しなわけ」
「ミキ先生はボクのデータ上では息抜きなんていらないくらいしか働いてない気がするんだけど」
ルイはこの状況に対しても冷静に言葉を発している。
確かに、ルイから見れば美樹は良く働いているようには見えないだろう。何せ、ルイは学校生活以外では父のラボで生活をしていて、父の不眠不休のような働きぶりを目にしているのだから。
「全く、揃いも揃って冷たいなぁお前達は……さて、世間話はこの辺にしておいて、本題に入ろう」
追い風が吹き始めたのを確認した美樹は、ポケットからタバコと携帯灰皿を出す。
トントン、と黒いタバコの先を親指の爪にぶつけ、葉を詰めると唇に挟み、ジッポで火を灯す。
ふう、と煙を吐いた美樹は無気力な瞳を私へ向けて、言葉を発した。
「笑里、実行委員まで押し付けちまった後に何なんだが、お前、あの場所に行って大丈夫なのか?」
どんなに無気力な瞳を向けても、その言葉だけで全部が分かってしまう。
そうか、この大人は私の全てを知っている。