【完】R・U・I〜キミに、ひと雫を〜
数時間新幹線で時間を過ごした後、昼間には京都へと到着した。


「ふーん、寺巡りねぇ……ボクには全部同じ日本式の建物にしか見えないけど」


「お!珍しく気が合うじゃねぇかルイ!アタシもそう思う!早く明日の自由時間になんねーかなぁ」


ヒューマノイドのルイからすれば歴史の偉大さなんてデータでしかなく有り難みが分からないのは仕方ないが、便乗した里佳子の方は単純に興味が無いだけだと思う。


そんな二人の会話に、カフェオレの匂いをぷんぷんと撒き散らした楠本燭は呆れ顔。


「歴史の積み重ねとか、その凄みが分からないなんて単細胞だね。……リカちゃんはともかく、ルイまで」


「な……あ、あか、燭マジウゼーんだけど!お前のそういうとこが腹立つ!」


さっきの出来事から、楠本燭の方は勇気を振り絞ったのか、里佳子の名を不自然ながらおそらく昔なじみの呼び方で呼んでいる。


会話とは裏腹に、里佳子も楠本燭も嬉しそうに顔をにやつかせているのは、一目瞭然。


「どうなってんのかねぇ……そろそろ、楠本に色々聞いても良い感じかな?」


ずっと何とも言えない距離感だったあの二人の変貌ぶりに、気を遣っていた嶋山成も、楽しそうに満面の笑みを浮かべた。
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