もう君がいない


私の声に振り向くと、


「やっぱり来た。」


そう言って、蓮は笑った。



「やっぱりって、私が来るってわかってたの?」


私は、そう尋ねながら蓮の隣に腰を下ろす。



「なんとなく、そんな気がした。」

「私もなんとなく、蓮がここにいる気がして。」

「え?」

「寝付けなくて、キャンプの時のこと思い出したの。それで、もしかしたら蓮も、って。」

「一緒だな。」

「蓮も?」

「ああ。ここに座ってたら、あの時みたいに茉菜が来るかもって思った。」



同じこと考えてたんだね、私達。


同じことを思い出してたんだ。



そんな風に、2人しか知らない思い出があって、

それを2人同じように思い出して、


なんだか、心がほっこりする。



「綺麗だな。」

「だね。」


見上げた空には、たくさんの星があった。



「京都でこれだけ綺麗に見えるんだから、茉菜が言ってた沖縄の星空は、もっと綺麗なんだろうな。」

「うん。もっともっと綺麗だよ。」

「そっか。」


蓮はそれ以上何も言わず、静かに星を見ていた。


しばらくの沈黙が、私達の間に流れた。


< 339 / 448 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop