もう君がいない


「焦らなくていい。時間はいっぱいある。」


そう言って微笑む蓮に、

私は涙をこらえるのに必死だった。



蓮が、どんな想いでその言葉をかけてくれるのか、、


”時間はいっぱいある”


でも、私に与えられるそのたくさんの時間も、

蓮には同じように与えられない。


これからまだまだ続く私の時間に、その隣に、蓮はいない。




神様は、なんて残酷なんだろう。



ねぇ、どうして蓮なの?

どうして蓮じゃなきゃダメなの?


こんなにもたくさんの人がいる中、

どうして神様は蓮を選んだの?


蓮がなにをした?

蓮が、なにかそんなに悪いことしましたか?

なにもしてないじゃない。


ただ、みんなと同じように産まれたのに。


産まれたときから、こんな残酷な運命を背負わされた。


ひどいよ、こんなの。




「ありがと。ゆっくり考えてみる。」


私が精一杯の笑顔でそう答えると、蓮はそっと私に手を差し出した。


その手を取ると、安心したように笑って、また眠ってしまった。


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