発展途上
「…縫依……疲れた…」
男は縫依を抱きしめ首筋に顔を埋めた。
「……八雲(やくも)…。お疲れ様。会合はどやった?」
八雲と呼ばれた男は縫依の言葉にガバッ!と顔を上げて微笑んだ。
「聞いて!なんとか上手く行きそうなんだ!」
それから二人はソファーへと移動し、今日の会合の話をした。
「今日は天花寺組と言うヤクザの組長と若頭が来ていたんだけどね、二人とも話のわかる方で契約もなんとかなりそうなんだ」
「よ良かったなぁ。おめでとうさん」
ニコニコと話す八雲につられて縫依も笑顔になる。
「ほして、お願いってなんなん?」
今日ここに来た理由は八雲から頼みたいことがあるから来てくれと電話があったから。
用事の途中で電話がかかってきた処を見ると、恐らく会合が終わってすぐかけてきたのだろう。
「来週、パーティーがあるんだ。同伴として参加してくれないか?今日の会合の時の面子以外にも大御所が沢山くるから、妹を紹介しておきたい」
そう言った八雲だが、妹………炉紅の事を嫁にやる気はさらさら無いようだ。
「ええやけど、着物でええやろか?」
炉紅は産まれてこの方洋服というものを着たことが無いので、パーティードレスなんてハードルの高い物を着れる自信がなかった。
「あぁ、大丈夫だよ。着物の人もいらっしゃるからね」
と、にこやかに答えた八雲はまた詳しい事は連絡すると言って縫依をランチに誘った。