甘いペットは男と化す
 
「ドキドキした?」
「……べつに」
「素直じゃないなぁ……。もう一回する?」
「しないよ!!」


両手をバッと広げられて、今にも抱きしめる体勢。

思わず、一歩後ずさって、ケイから1メートル離れた。


「今まで、結構抑えてたんだけど」
「そう、なの……?」
「うん。だけど、ガツガツしたら、家を追い出されるの分かってたから」


やっぱり、今までのは計算だったのか……。

子犬のようなうるんだ瞳。
つい許してしまいそうな振る舞い。

全部、あたしが、ケイを意識しないための策略だったなんて……。


「でもそれだと、アカリは俺のこと、好きになってくれないでしょ」

「……」


それは確かに、一理ある。

ただでさえ、年上好きだったあたしだ。
いくらケイが美少年で可愛くても、異性として意識できるかときたらそれは別で……。


「多分、こうやって迫っていったほうが、アカリが俺を好きになってくれそうな気がする」


にこっと微笑んだ顔は、今までと全く同じなのに、もう小悪魔な微笑みにしか見えなかった。
 
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