愛は時として狂気と化す
‡5‡
わたしは、頭を抱えてしゃがみ込んだまま

ベッドの上で寝息をたてる灰くんを見た。


細い首を見ると、また壊したくなる。

「ダメ…」

そう思っているのに


そっと、灰くんの首に手をかける自分がいた。



「……ん…っ……ぐ…ぅ」

だんだんと息が出来なくなっていく灰くんは

首を左右に振って、必死に息をしようとした。



ダメ…

ダメじゃない。






「動かないでよ灰くん。
首……絞めれないじゃない…」



自分の言葉に

驚いた。


考えとは裏腹に、体と口は勝手に動く。


『本物のわたし』がやっていることじゃない。

わたしが

『わたしの意志』でやっているのだ。



ゆっくりと手に力を込めて行く。


灰くんの目には涙が滲んでいた。



「…ぐ…ッ……苦…し」


うわごとのように呻いた灰くんの声に

わたしはやっと我に返った。


否、また『舞台』に戻ったのだ。

わたしは再び『お嬢様』のわたしを演じ始めた。


「灰くん……!!」

「ッ…ハァ……ハア…
おは…よ……るみ」


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