穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
波乱・・・
「咲希には先に言っておくけど、俺、今度異動になるから」

孝徳の実家から戻ってからご飯を食べて後片付けを終えた時だった。

「えっ!?」

私はいつかはそうなると思っていたけど、突然だった。

「管理部じゃなくなるけど、本社にはいるから」

と、言われて少し安心した。

一緒に通勤は出来る。

「どこに異動?」

「ん?新しい部署を立ち上げる」

「えっ!?そうなの?」

「うん。経営企画部」

「経営企画部?」

経営企画部って経営に関する部署だよね。

「そう。本格的にやるよ。ライバル社もあるし右肩上がりにするためには今まで以上に中長期計画をね。ある程度の役員とは同じ意見なんだけどね。抵抗勢力もあるから慎重にいかないとね」

なんか急に・・・

なんか急に・・・

私は自分でそうした理由がよくわからない。

でもなんか急に不安になった。

孝徳が違う人みたいに見えたんだ。

あっ最近思っていた不安。

私、邪魔じゃないかな・・・

さっき、こころを全てもっていかれたのに、一瞬にしてそんな不安に支配された。

ソファーに座っている孝徳の首に手を回し、ぎゅっとした。

「孝徳・・・」

私は自分の不安をどうしてもコントロールできなくなっていた。

「咲希、どうした?」

「ぎゅっとしてほしい」

その意味を孝徳がどう取るのかはわからなかった。

でもそう言っていた。

孝徳は優しく私をぎゅっとして、

「何を不安になってるの?俺は咲希がいてくれるから頑張れるんだよ」

と、そう耳元で囁くとキスをくれた。

孝徳は私の思っていることを『わかってるよ』と、言うように髪を優しく撫でてくれる。

その日の孝徳はとてもとても優しかった。







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