穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
お店の横の路地に入って私を周りから見せないように孝徳は肩を抱いてくれた。

「・・・ごめ・・ん・・・なさ・・・い」

「謝らなくていい。俺が悪いから。ホントにごめん」

「話せる・・・って・・・思ったの。・・・でもダメ・・・だった」

「話さなくていいから。いいから・・・」

そういうと孝徳は私をふわぁ~と抱きしめた。

「嫌なら言って」

嫌じゃない。

嫌じゃないよ。

なんか孝徳に甘えている自分がいる。

抱きしめられたまま私はそのまま何も言わなかった。


身長差はどれくらいだろう?

私は孝徳にすっぽり抱きしめられていた。

どのくらい経ったのだろう、顔を上げる。

それに気づいて孝徳も顔を上げる。

「ごめんなさい」

「大丈夫?」

「うん。大丈夫」

孝徳が手をはなす。

「落ち着いたか?」

「うん。ありがとう」

二人は歩き始めた。

「咲希。ごめんな」

前を向いたまま孝徳はそう謝った。

「孝徳が謝ることじゃないから。まさか話せないとは思ってなかったの。また今後話せられるようにするね」

「いや、もういいよ。そんな辛い顔させたくない」

「孝徳・・・」

私は孝徳を見上げた。

孝徳の優しい瞳が私を見ていた。

「今日みたいに明日から一緒に出勤しようか?」

突然、孝徳がそう言った。

「えっ!?」

「咲希は俺の”友達”だから・・・はたから見たら、付き合ってるとか思うかもしれないけど、そんなの言わせておけばいいし、”友達”として接したい」

「そうだね。私もそう思う」

「朝、一人で歩きたいときは遠慮せずに言って。先週までみたいに後ろを歩くから」

「わかった。でも孝徳が一人で歩きたいときは?」

「その時は時間を少しずらすから、マンションの前で後ろを振り返っていなかったらそういう日だと思ってくれていいから」

「了解」

私たちは微笑みあった。


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