穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
5度目から
パスタランチを食べて、会社に戻ってきたエレベーターホールの前。

エレベーターが到着すると、孝徳が降りてきた。

「あっお疲れ様です。今からお昼?」

と、私は声を掛けた。

こうやって声を掛けること自体が孝徳のことを他の人とは違うと認識していることになる。

「コンビニ行ってくる」

到着したエレベーターには乗らず、壁側によった。

「ねぇねぇ、早川さん。さっき、咲希が可愛いかったの」

余計なことを。

「なに?可愛いかった?」

「そう。あのね・・・」

言おうとしたことを言わせない。

「加奈子、余計なこと言わなくていいから・・・」

「可愛いかったってなに?」

と、孝徳は私の顔を覗き込んだ。

「なっなんでもないから・・・」

「俺には言えない?まっ咲希はいつも可愛いけどね」

またさらっとそんなこと言う・・・

「あらあらっやってられないわ」

と、加奈子はちょうど来ていたエレベーターに乗り、一人で上がっていった。

「置いていかれちゃった」

私は孝徳に肩を竦めて見せた。

「ホントだな。じゃコンビニ行ってくる」

「うん。いってらっしゃい」

孝徳は外へと向かい、私はエレベーターではなく階段を使う。

「咲希」

えっ?

孝徳の声だよね?

外に向かったはずの孝徳が階段の下から私を呼んだ。

手招きされ、少し上がった階段を下りた。

「どうしたの?」

「5度目からは”友達以上恋人未満継続”で、今週末またうちに来て」

えっ?

今週末?

私は孝徳を見上げた。

「土日楽しかったから、嫌じゃないならまた一緒に過ごそう」

「嫌じゃないけど・・・」

「なんか問題ある?」

「ないけど・・・大丈夫?」

「なにが?」

「なんとなく」

ここは会社だし、休みにいつも私といて大丈夫?

割りと一人が好きって言ってたし・・・

「大丈夫だよ。じゃまたどうするか決めよう。じゃ今度こそ、コンビニ行ってくる」

手を軽く上げて、孝徳はその場から離れていった。

今週末・・・

楽しかったし、また一緒に過ごすことに抵抗はないけど・・・



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