穏やかと癒し・・・ときどき、あい・・・
「じゃまたな」

そう言って竜二さんは少し酔った麻里子の腰に手を廻して二人で帰って行った。

「送るよ」

早川さんはそう言って歩き出す。

私の家の方向……

「早川さん、ここから近いので大丈夫ですよ」

「知ってる。ここから歩いて10分くらい?」

「えっ!?」

知ってるってなに?

「咲希は知らないかもしれないけど、いつも朝歩いてるの知ってるから」

いつのまにかさっきの居酒屋から呼び捨てにされてる。

えっ?
確かに家から30分歩いてる。

私は驚いて見上げた。

「俺も歩いてるの。たいてい咲希の後ろにいるよ。咲希が家を出るタイミングと俺が咲希の家の前を通るタイミングがほぼ一緒なんだ」

全然知らなかった。

「声掛けてよ」

「いや、掛けない方がいいかと思って、通勤時間は一人がいいって感じかと思ったから」

たしかに一人がいい。

だからわざわざ30分掛けて歩いてる。

地下鉄に乗ると会社の人にあって、一緒に通勤ってことになるから。

「早川さんって謎」

「そうを言うなら咲希の方が謎だよ」

「そう言えば、早川さんって遊び人なんですか?」

「まさか」

「だって、さっき麻里子が・・・あっなるほど」

「なに?」

「麻里子さんにそう見せてる感じ?」

早川さんが図星をさされたみたいに私を見下ろした。

「竜二さんは理由をわかってる感じだったなぁ~~~そうでしょう?」

「ほんの数時間で・・・麻里子とは幼馴染なんだ。小さい頃から一緒で、高校の時に竜二と出会って、すぐに恋に落ちた感じ」

「まだ想ってるの?」

「イヤ、好きって思いは幼馴染を大切にしてるって思いに変わってる。でもなんかあいつには彼女を紹介出来なくて・・・見透かされてるような気がして、すぐに終わってしまうような人を紹介出来ないから」

「そうなんだ。すぐに終わってしまうって、長続きしないの?」

「しないね。俺さ、割と一人でいるのが好きなんだよ。休みの日に会って必ず出かけてとかちょっとムリで。長くは続かない」

「そっか。でもわかる。私も一人が好きだし、ゆっくりしたい日もあるよね」

そう話している間に私の住んでるマンションの前に到着。

「今日はありがとう。助かった。また近いうちに飲みに行こうか?」

「私でよければ」

「じゃまた月曜日に、おやすみ」

「おやすみなさい」

軽く手を挙げ、早川さんは進行方向に歩き出した。

家はどこなんだろう?

私はそんなことを思いながら、見えなくなるまで背中を見送っていた。


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