俺様生徒会長に鳴かされて。

すると、見たことのある背の高い人が、手にマグカップを持って立っていた。





「…雪矢さん」





「おはよ、優羽ちゃん。

こうやって話するのは、昨日初めて会った時ぶりだね」



わたしはうつむきがちにうなづいた。



気まずくて…。



だって昨日逃げたきりだったんだもの…。



須田さんと雪矢さんがあんまり怖かったからだけど、

でも、悪いことしちゃったかな…って罪悪感はあった。



あやまらなきゃ。



そしてはっきりお断りしなきゃ。





「昨日は、ごめんね」





けど、先にあやまってくれたのは雪矢さんだった。



「なりたくないって言うのに無理強いさせようとして…ひどいことしたね」


「いえそんな…」


「立って話すのもなんだから、座ろうか」



と促してくれたのは、ベランダ隅にあるテーブルとイスだった。



「これ、着るといいよ。

朝の気温は、油断すると身体を冷やすから」



と、雪矢さんは羽織っていた白いカーディガンを脱いで、わたしに着せてくれた。



わたしの身体をすっぽりと包む大きさと、まだ残る温もりが、やさしくわたしを包んでくれる。





雪矢さんって、やっぱりやさしいな…。





彪斗くんと並んで才能ある作曲家で、プロデュースにも長けているって寧音ちゃんが言ってた。

見惚れるくらい綺麗な顔も、彪斗くんと引けを取らない。



けど、まるきり正反対って感じがする。



彪斗くんがワガママな王様なら、



雪矢さんはみんなにやさしい王子様だ。



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