俺様生徒会長に鳴かされて。



「ちゃんと味わって食ったのか?

せっかく買って来てやったのに、ぼさっとしながら食いやがって」



「ごめんなさい…」


「…それと、

さっきのあのおばはんどもの言ったことは、気にすんなよ」





…やっぱり、聞こえてたんだ…。





「おまえは可愛いよ、十分に」



どき、と高鳴る胸…。



でもだめだ。

彪斗くんは、わたしをはげまそうとして言ってくれてるだけで、わたしなんか





「おまえ、もっと自分に自信持てよ」





叱りつけるような声に身を縮めた。



ぶっきらぼうに、彪斗くんは続ける。



「確かにメガネはだせぇけど、それ買ってやったのは俺だろ。

おまえをブスにみせてんのは俺だ。

…本当のおまえを、他のヤツに見られたくねぇんだよ」



本当のわたし…?



「雪矢のマネするみたいで嫌だけど。

おまえは確かに「ダイヤの原石」だ。

みかけだけじゃなくて、素質も才能も…

おまえは特別なんだ。

…おまえ、歌うの好きだろ」


「ん…」


「可愛いって言われるのが、「ダイヤの原石」って言われるのが、どうしてかわからなくても、『歌うの好き』って気持ちだけは、はっきりわかるだろ。

なら、まずは自分のそこだけは自信持てよ。

そこだけ譲らなければ、だんだんわかってくるよ。

必ず見えてくるものが、あるから。

だから、わたしなんか、って思うな」



「……」



「…ほら行くぞ。

動物とでもふれあって、気分転換しろよ」





おそるおそる伸ばした手を、彪斗くんの力強い手が引っ張ってくれた。



彪斗くんの言ってくれたことの意味は、まだわたしにはよくわからない。



けど、



この手は離してはいけないんだ、



それだけは強く思えた…。





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