俺の彼女が照れないんだけど。
___入学式。(昴くん回想中)



「ーーでは、続きまして。
新入生代表、漆原藍。」


長い長い入学式も、やっと終盤まできた。今まで目をつむって寝ていた俺は、入試成績一番で合格した奴の顔が気になっていたから、この時ばかりは目を開いて前を見ていた。



タン、タン、タン。



舞台に立ったのは女で、特別身長が小さいわけではないけど、その華奢な体つきがより一層彼女を小さく見せていた。


その子は、舞台の中央まで来ると、くるりと前を向いた。


長い睫毛に、大きめの瞳。セミロングのハニーブラウンの髪の毛は、丁寧に巻かれていた。いや、あれは天然なのかな。

白い肌も、すらっと通った小さい鼻も、薄いピンクの小さな唇も。


その全てが、彼女の可愛らしい容姿をよく引き出させていた。


でも、気になるのは、その大きな瞳には意思というものがない。

何ともやる気のなさそうな瞳をしていた。

ぼーっと何処か遠くを見つめていて、次第には目をこすり始めたり、終いには、大きな欠伸を一つ。




その瞬間、きっと誰もが思った。




ーーーーコイツ、やる気あんのか、と。



「あー、桜舞う………あ。この季節。
えー。あたし達はーーーーー」



可愛らしい声とは裏腹に、やたらと余計な言葉がが多く、"私たち"ではなく"あたし達"と、驚くほどやる気のない彼女。


こんな奴が、ほんとに新入生代表でいいのか。


瞬時にそう思ったと同時に、少し苛ついた。

…もう少し態度を改めようとは思わないのか、と。

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