まどわせないで
アブナイ同窓会
 うーん、同窓会。
 同窓会、ねぇ。

 テーブルに向かい、座った小麦は届いた1枚の葉書を読んで重いため息をついた。
 懐かしい面々に会える期待感よりもまず、不安に襲われた。
 高校の時のクラスの同窓会ということは、わたしの生涯でただひとりのボーイフレンド「不感症!」と、ありがたくない言葉をくれた若林冬里(わかばやしとうり)と会う可能性があるということ。
 あの言葉に縛られてここまで生きてきたのだ。今さら顔なんて見たくない。
 でも、冬里が来ないなら……行きたい。
 来るのか来ないのか、どうなんだろう。あらかじめ連絡して聞くなんて絶対ありえないし。
 同窓会の返事、どうしよう。

 悩んでいると時間ばかりが過ぎていく。いつまでも葉書と向かい合っていてもしょうがない。小麦は気持ちを切り替えて夕飯の準備に取りかかった。
 冷蔵庫からカレイを取り出し、味が染みるように切り込みを入れ、今日の主食の煮付けを作り始める。

 彼氏、か。
 もし、あの初体験がうまくいってたら、いまも冬里と付き合ってたのかな。
 考えられないけど。

 向こうはどちらかというと明るくてハンサムで女子にも人気のある、クラスのなかで目立つ存在。わたしは勉強もスポーツも並のごく普通の一般生徒で、身長以外はこれといって目立つところもなかった。そういえば、冬里も身長は高くて同じくらいで、目線も同じくらいだったから話しをするぶんにはちょうどよい高さだったっけ。
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