まどわせないで
「小麦と杏子だ!」

「遅刻だぞ~」

「懐かしいな~」

「久しぶり!」

 高校の頃より大人びた顔つきになった男子、結婚して少しふくよかになった女子、あの頃はメガネをかけていなかった子がメガネをかけていたりと、皆少しずつ変わっていて観察するのも楽しかった。
 制服着たらまだ皆、違和感ないかも。
 店内はカウンターといくつかのテーブル席が設けられていて、女子が比較的多く座っているテーブル席に、小麦と杏子も揃って座った。
 和風居酒屋らしく、お刺身や煮物などの一品料理がテーブルに並んでいる。
 新しくメンバーが加わる度に乾杯をしているのか、テーブルにつくとすぐに出てきたビールで乾杯。
 おもったより女子の出席者も多く、これなら余計な心配もなく同窓会を楽しめそうだ。

「懐かしいね! なんかあの頃に戻ったみたい」

「高校のころが一番楽しかったね~」

「だね!」

 会わなかった空白の期間を埋めるように、話しは弾んだ。
 よかった。見渡す限り、冬里の姿は見えない。今日は来ないのかもしれない。
 小麦が安堵しているところに、タイミングよく、

「悪い! 遅れた」

 冬里が現れた。走ってきて暑いのか、片手でワイシャツの襟元を緩めながら入ってきた。
 大人びた笑顔には相変わらずいい男っぷりが表れている。もっとハンサムな男が身近にいるため、それほどの感動を小麦は感じなかったが。
 さっそく男子たちに背中をバンバン叩かれ、熱烈な歓迎を受けている。

「おっ結構集まってるな」

 人一倍高い身長のせいか、群がる男たちから頭ひとつ分くらい抜きんでていて店内を見渡している。その瞳と目が合った。
 冬里が眩しそうに一瞬目を細める。
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