≪短編≫群青
「見ちゃったぁー」


にやにやして出迎えてくれる、萌と園山くん。

まさかとは思ったが、



「聞いたよ、長谷川さん。昨日、さっきの男に告白されたらしいじゃん」


お喋り女め。

私が睨むと、萌は「ごめーん」と言いながらも、ちっとも悪びれていないような顔。



「いいねぇ、俺、応援しちゃう」

「何で園山くんに応援されなきゃいけないの」

「だってカノジョの親友とは、俺だって仲よくなりたいじゃん?」


何で私が、今更、大雅の友達と仲よくならなきゃいけないのか。



「私はなりたくないよ」

「うっはー。冷たいねぇ」


園山くんは、なのに意にも介さずケタケタと笑っていた。

能天気という意味では、このふたりは似た者同士のカップルなのだろうけど。


私は話を逸らしたくて、



「それより、今はテストのことでしょ。掲示板、見た? 生物はノート提出もあるんだって。あんたら、大丈夫なの?」

「えー? 全然見てなかったぁ。やばーい」

「色ボケしてんのもいいけど、留年したらどうすんのよ」

「綾菜ちゃん、ノート見せてよ」

「やだよ」

「えー! ひどいよ、私を見捨てないでよー」


萌は泣きそうな顔で私に縋り付いてくる。



私は笑った。

笑っているのに、ちっとも楽しいと思えなかった。


初めての失恋で空いた心の穴は、どうすれば塞がるのか、わからない。

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