≪短編≫群青
「何かさ、難しいね、恋愛って」


苦笑いの私。



「傷ついたり、傷つけたりするの、怖いんだよね」

「初めて聞いたよ、綾菜ちゃんの臆病発言」


萌は笑う。

笑いながら「大丈夫だよ」と言った。



「私はいつだって綾菜ちゃんの味方だからね」


瞬間。


ガシャーン、と、廊下からの大きな何かが割れる音が。

次いで、「桐原ぁ!」という、担任の怒号。



慌てて廊下を見に行くクラスメートたちに流される形で、私も廊下に出たのだが。



「何を考えてるんだ、お前は! 久しぶりに現れたと思ったら、いきなり窓ガラスなんか割って、どういうつもりだ!」


割れた窓ガラス片が散らばった廊下。

そこで揉み合う大雅と担任。


騒ぎを聞きつけた生徒たちと他の先生も集まってきて、ちょっと壮絶なことになっている。



「桐原!」

「うるっせぇなぁ! 放っとけよ!」

「とにかく職員室に来い!」

「離せよ、おい!」


羽交い絞めで連れていかれる大雅。

ふと目が合ったが、すぐに舌打ち混じりに逸らされた。


私には関係ないということか。



「わー。修羅場だねぇ、桐原くん」

「だね」
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