≪短編≫群青
「話がある」


と、私の腕を掴んで引く。



「えっ、ちょっ」


いきなりのことに戸惑い、腕を引かれてよろめく私。

目の前の市井くんも、目を見開いて固まっている。



「桐原くん?!」

「何で大雅が」


後ろで萌と園山くんも驚きの声を上げる。

それどころか、大雅があまりにも大声で私を呼んだものだから、何事なのかと廊下にいた人たちの視線までも集中して。


内心、パニックになりながらも、私は、



「は、話って言われても」


その手から逃れようとしたのだけれど。



「うるっせぇなぁ! いいから今すぐ来いっつってんだろ!」


びくりとした。

こんな必死そうな大雅を、私は初めて見たから。


大雅のあまりの気迫にそれ以上の抵抗ができなくなって、私は腕を引かれるままに、その場から連れ去らわれた。

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