≪短編≫群青


こんなに走らされたのなんて、一体いつぶりなのか。

校舎裏の非常階段のところまで来てやっと止まり、息を切らす私と大雅。



「やっべぇ。きっつー」


私を走らせた張本人は、肩で息をしながら非常階段に腰を落ち着けた。

その態度に、無性に腹が立った。



「ふざけないでよ! 何考えてんのよ! これはどういうことなのか説明して!」

「わかったから、わめくな」


飼い主が一喝するように言う大雅。


私は唇を噛み締めた。

それでも息を吐き、私は今度は努めて冷静に聞く。



「話って何?」


問う私に、大雅は青い空を仰ぎ見る。



「うちの親、離婚することになった」

「……え?」

「でも別に親父が出ていくだけだから、俺とおふくろは今の家のままだし」

「えっ、ちょっ」

「まぁ、元々、親父なんているんだかいないんだかわかんないような存在だったし、俺の名字もそのままでいいらしいから、どうでもいいんだけど」


大雅は本当にどうでもよさそうな顔で言う。

けれど、私にしてみれば、それはとんでもない報告だった。



「もしかして、大雅、それで荒れてて窓ガラス割っちゃったの?」

「いや、離婚すること事態はそこまでショックじゃなかったんだけどさ」


そこで言葉を切った大雅は、ふと視線を足元に落とした。
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