吸血鬼の翼
結局、3人で行動する事になった美月達は再び長い廊下を歩き始める。
イクシスと一度、通った場所をなぞって目指していた。
そうすると、ラゼキは不意に立ち止まり美月と佐々木を振り返る。
「…ええか、その親友を取り戻すまでやからな。後は大人しいくしときや。」
「分かった。」
釘を打つラゼキに気圧された美月は静かに頷く。
一方の佐々木はまだ不思議そうに首を傾けた。
「今日は何か変な日だな。」
「そうだね、でも今日限りだよ。」
美月が苦笑いを浮かべて佐々木に相槌を打つと直接、窓から外が見える廊下へと出る。
すれば、月明かりで辺りが朧気に映し出された。
この廊下だけ淡く照らされて、まるで幻想的な場面を思わせる。
前を歩くラゼキを見るとオレンジの髪が月明かりに映えて綺麗だ。
そこで漸く、美月はある事に気付いた。
以前、着用していた筈の白いロングコートを彼は着ていないのだ。
「ラゼキ、コートどうしたの、寒くない?」
「……ちょっとイルに貸しててな。」
「イルトに!!?」
イルトの事を気になってはいたが、言葉に出すのを躊躇っていた矢先にラゼキの口から放たれる。
美月は思わず、大きな声を上げてしまう。
ラゼキと佐々木は驚き、美月へと視線を送った。
「…ごめん…イルトはどうしたの?」
「待っとけって言うたから今もこのビルの外に居ると思うけど。」
美月は顔を真っ赤にして、俯きながらイルトの事を聞いた。
気にも止めずに促すラゼキに物足りなさを感じて美月は沈黙する。
「イルトって?」
「……えっと、」
佐々木に聞かれた美月は誤魔化そうと一度は口を開いたが、それっきり気まずそうに再び黙る。
誤魔化せば良いじゃない。
ラゼキやイクシスと同じ様に。
どうして何も言えないの?
美月はまだ頬に紅潮を残したまま、長い廊下を黙々と歩き出した。
イクシスと一度、通った場所をなぞって目指していた。
そうすると、ラゼキは不意に立ち止まり美月と佐々木を振り返る。
「…ええか、その親友を取り戻すまでやからな。後は大人しいくしときや。」
「分かった。」
釘を打つラゼキに気圧された美月は静かに頷く。
一方の佐々木はまだ不思議そうに首を傾けた。
「今日は何か変な日だな。」
「そうだね、でも今日限りだよ。」
美月が苦笑いを浮かべて佐々木に相槌を打つと直接、窓から外が見える廊下へと出る。
すれば、月明かりで辺りが朧気に映し出された。
この廊下だけ淡く照らされて、まるで幻想的な場面を思わせる。
前を歩くラゼキを見るとオレンジの髪が月明かりに映えて綺麗だ。
そこで漸く、美月はある事に気付いた。
以前、着用していた筈の白いロングコートを彼は着ていないのだ。
「ラゼキ、コートどうしたの、寒くない?」
「……ちょっとイルに貸しててな。」
「イルトに!!?」
イルトの事を気になってはいたが、言葉に出すのを躊躇っていた矢先にラゼキの口から放たれる。
美月は思わず、大きな声を上げてしまう。
ラゼキと佐々木は驚き、美月へと視線を送った。
「…ごめん…イルトはどうしたの?」
「待っとけって言うたから今もこのビルの外に居ると思うけど。」
美月は顔を真っ赤にして、俯きながらイルトの事を聞いた。
気にも止めずに促すラゼキに物足りなさを感じて美月は沈黙する。
「イルトって?」
「……えっと、」
佐々木に聞かれた美月は誤魔化そうと一度は口を開いたが、それっきり気まずそうに再び黙る。
誤魔化せば良いじゃない。
ラゼキやイクシスと同じ様に。
どうして何も言えないの?
美月はまだ頬に紅潮を残したまま、長い廊下を黙々と歩き出した。