吸血鬼の翼

啜り泣きの声だけが辺りに響き渡る―。

そんな美月の様子に気付いた人がいた。
美月の意識がなくなる前に見た漆黒の服を纏った青年、クラウだ。
クラウは此方を見たかと思うとすぐに視線を美月から離す。

なんなの?この人は―。

涙で視界が霞んでよく見えないけどその目立つ服はハッキリと見える。

美月は視線を上に向けるとイルトはクラウに強張った表情で威嚇をしている。

私に出来る事は何だろう?

美月はただ困惑するしかなかった。

「嬢ちゃん!!」

すると不意に聞き慣れた声が美月の耳に届いた。
美月は声の主を確認する為、その聞こえて来た方角へと振り向く。

其処には、美月の予想通りの人物が立っていた。

「…ラゼキ!!」

「何してんねん!家におれって言ったやろ!?」

怒鳴ったラゼキも又、イルト同様に厳しい表情をしている。
どうやら、この状況を把握しているみたいだ。

「…ごめんなさい…」

美月はその言葉しか言えなかった。
謝るしか、今の美月にはそれ以外の方法が見つからない。

ラゼキは深く溜め息をついて此方へと足を運んだ。

真剣な顔をしている。

とても、憤った表情―。


イルトの前に立ちはだかるなり、深く息を吸った。

「イル!!」

「…!?」

突然、ラゼキに大きな声で自分の名前を呼ばれたイルトは体をビクッと反応させた。
美月は怖くて思わず、瞼を深く閉じた。


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