吸血鬼の翼
ラゼキは怒鳴り終えた後、イルトに向かって右手を勢いよく突き出した。
険悪の空気を漂わせているラゼキの様子にイルトは怯むと足を後退させた。
そんなイルトの行動に対し、ラゼキは構う事なく、突き出した手を止めることなく続ける。
そして口を開いた。
「嬢ちゃんを放し!今のお前には危なっかしくて任せられへんわ!!」
ラゼキの言葉にイルトは答える事なく美月を抱えている手を強く握り締め、首を左右に振る。
しかし、その返事を許可する事なく、伸ばされたラゼキの手は美月の腕を掴み、勢い良く引っ張られる。
当然の如く、美月とイルトは離れる形になった。
「ミヅキッ…!!」
その対応にイルトは納得がいかないのか、再び美月を自分の所へ戻そうと腕を伸ばす。
だが、ラゼキはその手を冷たく払い退け、阻止される。
美月は遣る瀬無い思いに駆られる。
何も出来ない自分に悔しさを感じた。
…私は無力だ。
ただ涙は頬に伝っていく。
「おい、俺を無視する気か」
クラウが低い声で美月達に向けてそう言い放った。