イジワル同期とルームシェア!?
そうだ、昨夜の飲み会で近くにいた。話が少し聞こえた。
直接は話さなかったな、たぶん。

その古町は手作りの弁当を前に、両手を合わせて『いただきます』をしているのだ。神妙な顔で。

うわ、久々に見た、その仕草。
なんか新鮮だけど、変な子に見えてしまう。

つーか、新人研修2日目にして、こんなところでひとりごはんですか。
女子の集団に馴染めないタイプなのかな。
ひとりが好きとか?

いや、この子フツーに女子と喋ってたぞ。研修の合間も、ゆうべの飲み会も楽しそうに。

あ、もしかして午前中の件で凹んでるのかな。
それで、ひとりになりたかったとか。


俺の頭にはさっきの研修の些細な事件が過る。

古町文を10メートルほど離れたところで見ていたのだけど、ふとしたきっかけで古町が顔を上げた。

ばっちりと目が合ってしまう。


「青海くん」


古町がつぶやくのが、唇の形でわかった。


「古町さん、隣いい?」


俺は何となく言わなければいけないような気持ちになり、引きつった笑顔で声を張った。
じろじろ眺めてたなんて、気まずいもんな。

< 299 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop