猫系男子の甘い誘惑
やり直さないと始まらない
「なんで、よりによってこのホテルを選ぶのかな?」

 他に空いている部屋はいくらでもあるだろうに、佑真が倫子を連れてきたのは、倫子が酔いつぶれた日に連れてこられたホテルだった。

 入り口を入り、ずんずんと部屋の中央まで進んだ倫子は、ため息まじりに室内を見回す。
 
 以前とは違う部屋に通されたのだが、室内の装飾は変わらなかった。清潔感はあるものの、おもしろみはない室内装飾。茶系統のベッドカバーで覆われたベッドにテレビ。ベージュのカーテンと同じ色のカーペット。

 あの夜、何があったのかを覚えていないだけに、朝目が覚めた時の衝撃を再現されているようで頭が痛い。

「……それで?」

 やけにつんつんした声になってしまったのは、自分が緊張しているのを悟られたくないから。

 部屋の中央に立ち、両手を腰にあてて入り口を入ったところに立ったままの佑真を睨むと、気まずそうに彼は視線をそらした。

「だってさ、ここから――やり直さないといけないから」
「どういう意味?」
「どうって――そのまんまの意味だけど。ここからやり直さないと、何も始められないでしょ」
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