明日はきっと晴れるから



「ここじゃ廊下から丸見えだから、あっちの奥でしよっか」


春町くんがいつもの笑顔を浮かべて、私の手首を引っ張った。



「い、嫌……やめて……」



怖くて声が震えてしまう。

足を突っ張り、何度も首を横に振り、私なりに精一杯の拒絶を表した。


それでも春町くんは離してくれない。


「大丈夫だから。
一回しちゃえば菜乃花ちゃんにもキス友の意味がわかるし、これからも俺らと仲良くやっていけるから」



グイグイ腕を引っ張られて、一歩二歩と水飲み場に足を踏み入れてしまった時……。


「何してるの?」


真後ろから声がした。


私が振り向く前に誰かが素早く駆け寄って、私の手首から春町くんの手を引き剥がした。


それから私を背中に隠すようにして、前に立ちはだかる。



驚く私の目の前には、スラリと均整のとれた体躯の男の子。


ほのかに洗剤のいい香りが漂う白いワイシャツと、黒いサラサラした短髪。



後ろ姿でもすぐにわかった。

結城くんだ……。



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