明日はきっと晴れるから



開いてみると、携帯電話の番号とメールアドレスが綺麗な文字で書いてある。



「これ、結城くんの携帯電話?
持ってたの?」



夏休み前に連絡先を交換したときに教えてもらったのは、自宅の電話番号。

だから、結城くんも私と同じで携帯電話を持っていないと思っていたのに。


不思議そうにしている私に、結城くんはこう言った。



「3日前にスマートフォンを買ったんだ。

宗多さんからの連絡を、いつでも受けられるようにと思って」



「えっ、私のために?

スマホって、高いんでしょ? 通話料とか月々かかるんでしょ?
そんなの悪いよ!」



「大丈夫。バイトしてるから。
バイトって言っても、祖父の翻訳の仕事の手伝い程度だけど。

中学の時からずっと手伝ってきて、出来高でバイト代をもらってる。

今まで携帯電話を持たなかったのは、金銭的な理由じゃなくて、必要性を感じなかったからだよ。

けど、今は必要だと判断したから買った。それだけ。

いつでも連絡して。困った時も、そうじゃない時も。それじゃ」




結城くんが自転車を漕ぎだした。


水色シャツの背中が、遠ざかっていく。


私はもらったメモ用紙を胸に抱きしめて、結城くんの姿が見えなくなるまで見送った。



結城くん……ありがとう……。


新学期、学校に行けるといいな。


結城くんと同じ学校に……ーーーー。







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