看板娘の嫁入り
「おはようございます、春彦さん!」
客間の外からつぼみが呼ぶ。
「おはよう、つぼみ。」
「春彦さん、今日は遊びに行きましょう!」
つぼみは弾んだ声で春彦を誘った。
「つぼみ、入っていいよ。支度はできているからね。」
スーっと障子を開け、つぼみは春彦を見た。
「つぼみ、どこに行くのだ?」
「春彦さん、わたくしは、城のそばの店通りに行きたいのです!」
「綺麗な布が売っている所かい?」
春彦は言い終えてから、少し焦った顔をした。
「そう!そうです!」
「つぼみ、今日はここに泊まれないかもしれないけど、いいかい?」
春彦の質問に、つぼみは、少し不思議な顔をした。
「春彦さん?」
「いいんだ、なんでもないよ。行こうか。」
春彦は悲しそうな顔をしながら、笑顔でつぼみに言った。
「はい!」
と何も知らないつぼみは満面の笑みで返事をした。
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