素顔で最高の恋をしよう
 目の前の胸板を叩いて、なにをやってるのだと抗議しなくては。
 架くんが好きなのは杜村社長なのだし、キスするなら相手が違う。

 そう頭では理解しているのに、行動がまったく伴わなくて。
 私は胸板を叩くどころか、なにも抵抗できなかった。

「ごめん。もう少し……」

 一瞬唇を離した架くんは至近距離でつぶやき、再び私の唇に自分のそれを重ねた。

 今度はもっと強く、熱く……深く。


 架くんが右手を私の髪に差し込み、後頭部を支える。

 それでも私は架くんのシャツの裾を掴むだけで、抵抗はしなかった。

 あなたの真っ直ぐな心に、このとき()ちてしまった。

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