横顔の君




「あ、紗代さん!」

あんなことがあったっていうのに、私は思わず微笑んでしまった。
それほどまでにいつもと同じ照之さんの優しい笑顔……



「体調はどうですか?」

「は、はい、もう大丈夫です。
ご心配をおかけしました。」

「お友達とは楽しく過ごせましたか?」

「はい。とても…」

交わされる他愛ない会話に、嘘はどこにも感じられなかった…



やっぱり、あれは私の見間違いだったんだ…
そんな風に思えた。



「照之さん…最近、なにか変ったことはありましたか?
あ、連休はどうされてたんですか?」

「紗代さんが遊んでもらえませんでしたから、僕はいつも通り、本を読んで過ごしてましたよ。」

「何を読んでたんですか?」

「今はこれです。」

そう言って、照之さんは読みかけの本の表紙を見せてくれた。



「そうでしたか…」



そんなものは何の証拠にもならない。
だけど、どんなに疑って見ようとも、嘘らしき態度は少しも見られなかった。



(そう…きっとあれは私の見間違いだったんだ…)



私は自分にそう言い聞かせた。
< 109 / 130 >

この作品をシェア

pagetop