横顔の君
「僕は度を越した本好きですが、実はそれは先祖からの血みたいなものなんです。
古本屋を作った僕の曽祖父は、何でも奥さんが読書家だったらしいんですね。
それで、曽祖父が、奥さんへのプレゼントのつもりで古本屋を作り、奥さんの名前をとって『きょうか堂」とつけ、それを祖父の代になってから『鏡花堂」と変えたと聞いています。
曽祖父の時代からずっと、あの店は自分達の書庫みたいな気持ちで続けて来ました。
出来れば、僕も、紗代さんともそうやっていけたらと考えています。」

「まぁ…」

お母さんは私を見て微笑み、私は恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じた。



でも、そう出来たらどんなに幸せだろう…
好きな本に囲まれながら、照之さんと二人であの店を続けていけたら…



「あ、隠岐さん…
夕飯も召し上がっていって下さいね。
紗代とふたりで腕をふるいますから。」

「ありがとうございます。
とても楽しみです。」



今日はちょっとした顔合わせだけって言ってたのに、お母さんは突然予定を変えた。
そんなつもりはなかったから、たいしたものは買ってないのに、一体どうするつもり!?



「お母さん、私ちょっと買い物に行って来る!」

私はそう言ってスーパー目指して飛び出した。



お母さんはありあわせのごく庶民的な料理を振舞うつもりだけど、やっぱりそれはあまりにも恥ずかしい。



そう、相変わらず私は見栄っ張りで…
それに、照之さんにはちょっとでもおいしいものを食べさせてあげたいから…



そんなことを言ったら、「今からそんな調子じゃ先が思いやられるわね…」なんて言って、きっとお母さんは笑うだろうけど…
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