横顔の君
「私…地方の大学に行ったって言ったと思いますけど…
あれ……実は、失恋が原因だったんです。」

「……どういうことですか?」

「私…彼氏を親友に取られたんです。
それで…この町にいるのがいやになって、それで……」

「そうだったんですか…」

「今思うと、本当に思い切ったことをしたって思います。
家族にも迷惑をかけました。
特に学びたいことがあったわけでもなんでもなく、ただ親友や彼の顔が見たくないだけでそんなことをして…」

思い出すだけでも胸が痛んだ。
私の身勝手で、お父さんの死に目にも会えなかったこと…
それは一生忘れられない心の傷だ。



「その理由も、まだ誰にも話してないんです。
話せないですよね…申し訳なさ過ぎて…」

「仕方ないことだと思いますよ。
あなたはまだ若かったのですから……」

そうなのかもしれない。
私がもっと年をとっていて、もっと分別があったなら…
きっと、失恋くらいでそんなことはしなかっただろうと思う。



「大学に入ってから、なんとなくお付き合いした人はいましたが、私もやっぱり長続きはしませんでした。
本当に好きだったかどうかもよくわからないんです。
……全く酷い話ですよね。」

「そうでしたか…」

「それで、あと少しで大学を卒業するって時に、父が急死したんです。
私はお父さんの死に目にも会えませんでした。」

「それはお辛かったですね……」

「はい、私の身勝手で遠くに離れてたからこんなことになったんだって、自分を責めました。
それで…こっちに戻っておいでっていう母の言葉にも素直になれなくて…
だから、向こうで働いてたんです。
とにかく罪滅ぼしみたいな気持ちが強くて…遊びに行ったり、何かを買ったりもせず、ただ、がむしゃらに働いてました。
その頃は本当に恋愛のことなんて全く考えませんでした。
彼氏がほしいとか思ったこともありませんでした。
もう私はこの先、一生誰のことも好きになんてならないだろうって…
漠然とそんなことを想ってました。」

こんな恥ずかしい話をどうして私は話してるんだろう?
自分でもどこか不思議に思いながらも、私は話し続けていた。
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